Friday 3 February 2012

Do you agree?

スコットランド政府が独立を問う住民投票に関する意見書を公表してから1週間が経ちました。先週予定されていたサモンド首相と、英政府のスコットランド担当大臣マイケル・ムーアの会見は、ムーア大臣が水疱瘡にかかってしまったため延期になりました。今週になりムーア大臣の病状が快復し、会見は13日にエディンバラで開かれることが決定しました。スコットランド政府と英政府の主張の食い違いはこれまでに見ましたが、確認しておくと以下のようになります。



これらの食い違いを一度の会見で解決に導くことは不可能に近く、交渉は長引くことが予想されますが、両者の政治的駆け引きの手腕に注目、といったところでしょうか。

・フェアな問い?

先週の意見書の公表から、各メディアでは意見書をめぐってさまざまな議論が両陣営から展開されましたが、主要な議論のひとつが、問いの文言をめぐってのものでした。前回見たように、スコットランド政府は住民投票の問いを「あなたはスコットランドが独立国となることに賛成しますか?(Do you agree that Scotland should be an independent country?)」としたわけですが、この問いについて、マーケティングや心理学の専門家は「フェアではない」「バイアスがかかっている」という主張をしました。

曰く、さまざまな調査において、「~に賛成しますか?(Do you agree ~)」という問いをすると、「~に賛成しませんか?(Don't you agree ~)」という問いをした場合に比べて、数パーセントの違いがでるとのこと。一般的にひとびとは肯定的、イエス、という答えを選びたくなる傾向があるため、問いの内容にかかわらず、肯定的なDo you agreeの場合のほうが、否定的なDon't you agreeに比べて支持を得やすいらしいのです。そのため、マーケティングや大規模な調査で正確な情報を得たい場合、「賛成ですか、反対ですか(Do you agree or disagree)という両論表記でいくことがふつうとされています。一方、SNPの議員や独立賛成派のメディアはこの問いは短く、明確で公平である、と述べています。

この問いが短く明確であることは一目瞭然ですが、私の個人的な感想としては、これはかなり念入りに作られているなぁと思いました。これは他にも問いの設定がありえたことを考えるとよくわかります。住民投票はスコットランド独立に関する問いなので、たとえば「あなたはスコットランドが連合王国から分離することに賛成しますか(Do you agree that Scotland should be separate from the United Kingdom?)」のような問いも不可能ではないわけです。しかしこのように独立を分離、あるいは連合王国解体とみる問いには、否定的な要素が少なからずあるため、支持が集まりにくいことが予想されます。

・分離か自立か

サモンド首相としては、独立の問いは連合王国に関係なく、スコットランドの問いであり、スコットランドが自立すること、スコットランド人が自分たちで自分たちの将来を決めることである、というポジティヴな問いを投げかけたいのでしょう。実際、サモンド首相は先週、「スコットランドの独立後も連合王国は維持されるでしょう」と述べ、それは独立後のスコットランドが連合王国の一部であり続けることか、と問われると、「政治的独立の話をしているのに、連合した王国(united kingdoms)の話をして、問題を混乱させるのはやめたほうがいいでしょうね」とはぐらかしました。他のインタヴューではスコットランド独立後も「社会的な合同(social union)は保たれます」と述べています。スコットランド独立を、連合王国からの分離、という風に解釈されたくないサモンド首相の意図が見え隠れします。

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