Thursday 3 May 2012

スコットランド法(2012)成立

スコットランド法(2012)の表紙

2010年に英議会に提出され、庶民院と貴族院それぞれを通過していたスコットランド法案(Scotland Bill)が、エリザベス2世の裁可を得、スコットランド法(2012)として成立しました。

・コールマン委員会とスコットランド法

スコットランド法案はもともと、スコットランドの権限委譲(Devolution)の現状を調査し把握するために2007年に設立された委員会、通称コールマン委員会の詳細な報告を元に作成されました。コールマン委員会は、2009年の最終報告において、権限委譲を肯定的に評価し、スコットランド議会はスコットランドの政治生活の中心として確固たる地位を得た、と分析しました。いっぽう、スコットランド議会のアカウンタビリティ、特に歳入面での責任に欠けるとし、英政府はさらなる財政権限をスコットランド議会に与えるべきだ、と結論付けました。

具体的にいうと、スコットランド政府に歳入面での権限はなく、英政府から付与される補助金が財源なのですが、スコットランド法案は以下の変化(主要なもの)を盛り込みました。

  • スコットランド政府はスコットランドの所得税の半分を歳入とする
  • スコットランド政府はスコットランドの土地税・埋め立て地税・印紙税を歳入とする
  • 英政府からスコットランド政府への補助金の額を減少する
  • スコットランド政府は速度規制・飲酒運転規制・エアガン規制等について、スコットランド独自の規制が可能になる

これらの変化が実際に起こるのは早くても2015年くらいだろうと言われています。

・変化の早さ

このスコットランド法は、昨今の独立をめぐる議論の中で、あまり注目を浴びてきませんでした。前回のエントリでまとめた完全な独立と、それについてのオプションである権限委譲プラス、あるいはマックスに比べると、やはり地味というか、注目を浴びてないのは無理のないことかもしれません。権限委譲プラスは北海油田の地理的シェア、マックスは収益のすべてをスコットランド政府に与えることを考えると、スコットランド法は限りなく現状維持に近いといえます。この法案のもとになったコールマン委員会報告が作られた2009年には、北海油田での収入をめぐる議論はここまで具体的ではありませんでしたから、スコットランド法が地味に見えるということ自体が、この3年間の変化の大きさを示唆しています。この独立問題をめぐる状況の変化をもたらしたのは、2011年5月の選挙でのSNPの大勝であるとみてよいでしょう。

ちなみに今日(5月3日)はこちらでは市議会選挙の日なのですが、この結果が独立問題をめぐる状況に影響を与えることも必至といえます。開票は明日なので、結果が出てからその分析をしてみましょう。

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