Saturday 14 January 2012

あと1000日?

Copyright © 2012 PA


1月8日、BBCのインタビューでデビッド・キャメロン英首相(写真左)はスコットランド独立をめぐり自説を展開しました。曰く、宙ぶらりん状態の独立問題はスコットランド経済の先行きを不透明にし、スコットランドに対する投資活動を鈍らせるため、経済的に悪影響を与える。

スコットランド人自身が、独立をめぐる住民投票がいつになるのか、投票がどのような問いの形式になるのか、そして誰の責任でそれが行われるのか、あまりよくわかっていない。これはとても不公平なことです。……したがって近いうちに我々英政府が法的な状況を明確にし、「それではこれこれこういう公平かつ明確なやり方でこの問題を解決しましょう」と提案する必要があるでしょう。

と発言しました。このキャメロン発言に対して、スコットランド政府のアレックス・サモンド首相(写真右)は「スコットランドの民主主義に対する介入である」と批判し、独立をめぐる住民投票はあくまでスコットランド人の問題であり、いつどのように投票を行うのかはスコットランド人が決めることであると述べました。

キャメロン英首相はスコットランド独立に反対であり、独立をめぐる住民投票の開催自体については賛成ですが、それを英政府の主導のもと公平かつ明確な方法で早急に行うべきだと主張しています。一方、サモンド首相は、英政府は住民投票の開催について口をはさむべきではない、住民投票はスコットランド政府の責任で行い、英政府はそれを妨げることはできないという考えのようです。

このやりとりの背景には政治的駆け引きがあります。スコットランドでは2011年5月の選挙でスコットランド国民党(Scottish National Party = SNP)が過半数以上の議席を獲得し、第一党に躍り出ました。SNPの党公約はスコットランドの独立をめぐる住民投票を開催し独立を目指すことですから、SNPとしては、2011年5月の選挙結果はスコットランド国民が独立のための住民 投票開催を望んでいる、という解釈が可能になります。

ところが実際は、SNPが選挙では勝ったものの、実際に独立を望んでいるスコットランド人の割合は現在約3割強で、SNPへの支持=独立賛成、というわけではないようです。キャメロン首相が住民投票の早期開催を狙う理由がここにあります。現状では独立への支持はそれほど高くなく、住民投票が早ければ独立賛成派が支持を広げる前に、独立問題に決着をつけることができます。いっぽうサモンド首相としては、住民投票開催までにできるだけ時間稼ぎをし、その間にあらゆる手段を用いて独立への支持を広げることが狙いとなるでしょう。

英政府は当初、2012年1月から18ヵ月以内の住民投票の開催を意図していましたが、サモンド首相は2014年の秋を開催の時期とすると発表しました。2014年は独立派には非常に意味のある年です。中世、スコットランドはイングランドの支配下にあったのですが、13世紀末~14世紀の初めに対イングランド抵抗・独立運動がたかまり、スコットランドは1314年のバノックバーンの戦いでイングランド軍を撃破しました。バノックバーンの戦いは1320年のスコットランド独立につながる非常に重要な戦いとされており、サモンド首相はその700年周年となる2014年を独立を問う住民投票の時期に選んだわけです。

サモンド首相の狙い通り2014年の秋に住民投票が開催されれば、スコットランド人の歴史的選択まであと約1000日残されたことになります。

Copyright © 2012 Scotsman

No comments:

Post a Comment