ハギスとバーンズ |
今日1月25日はスコットランドの国民的詩人ロバート・バーンズ(1759-1796)の誕生日です。スコットランドのみならずアメリカ、カナダ、オーストラリア等世界各地で、ハギスを食べ、バーンズの詩を読み、ウィスキーを飲み、Auld Lang Syne(蛍の光のもととなる歌です)を歌ってバーンズの誕生を祝います。バーンズ・サパーと呼ばれるお祝いです。バーンズはスコットランド人独特の心情と歴史的感性を、英語ではなく英語の一方言であるスコットランド語で簡潔かつ直截的に表した詩作で知られ、いまではその詩作はスコットランド文化の不可欠な要素となっています。日本で言う石川啄木や宮沢賢治にあたるでしょうか。夭逝し、後世の名声に対して生存中は比較的不遇だったことも似ていると言えます。1月25日は多くのスコットランド人にとって、バーンズの詩作を通じて、自国の文化を称え、スコットランド人であることの意味を確認する日とも言えるでしょう。
この重要な日に、アレックス・サモンド首相はスコットランド議会で、独立を問う住民投票に関する意見書を公開しました。
Copyright © 2012 BBC |
Your Scotland, Your Referendum『あなたのスコットランド、あなたの住民投票』というタイトルの122ページからなるこの意見書(このサイトから見れます)は、今月上旬から一気に加熱してきたスコットランド独立問題をめぐる論争において、主導権を握ろうとするスコットランド国民党(SNP)の試みと解釈してよいでしょう。この意見書は、2014年秋にスコットランド政府が計画している住民投票の詳細について述べたもので、専門家だけではなく一般からの意見を踏まえた上で、内容を調整し、その後スコットランド政府が2013年初頭の作成を計画している住民投票法につながるものです。
意見書の重要な論点は以下になります。
- 住民投票は「あなたはスコットランドが独立国となることに賛成しますか?(Do you agree that Scotland should be an independent country?)」とする。
- 住民投票は2014年の秋に行う。
- 投票は通常のスコットランド議会選挙と同様に行うが、年齢の下限を16・17才に引き下げる。
- 投票は英議会の選挙委員会の監督のもとで行う。
意見書の内容のほとんどが、これまでサモンド首相およびSNPが述べてきたことで、特に「サプライズ」はありません。ただし、1の投票の問いについては、サモンド首相は簡潔な一問一答(独立に賛成か反対か)となることを優先するとしたものの、1の問い以外に、さらなる権限委譲についての問いを加えるかどうかについては結論は出しませんでした。ここはSNPの苦しいところで、世論調査の結果によると、現段階では独立賛成は約4割程度なので、独立達成が確実とは言えません。独立への支持が2014年秋までに増えない場合SNPの敗北となるので、そうなった場合に、SNPは独立ではなく、さらなる権限移譲(maximum devolution、あるいは略してdevo-maxと呼ばれています)というオプションも残しておきたいのだと言われています。
2と3については以前にサモンド首相が提案した通り。16・17才に投票権を与えるのは、スコットランドの未来を背負うのは若い世代であり、住民投票がその層を含むのは当然だというのが理由として述べられています。いっぽうで独立賛成は年齢が若くなるほど多くなるというデータがあるので、その点でSNPに有利という側面も見逃せません。また4については、これはSNPが英政府に譲歩をしたもので、以前はサモンド首相はスコットランド政府が任命する独自の住民投票用の選挙委員会による監督を主張していました。
一方、かねてから問題になっているスコットランド議会の住民投票開催に関する法的権限については、SNPが従来主張しているとおりで、スコットランド議会は独立を問う住民投票を行う法的権限を持つと主張しています。英政府はこれとまったく異なる主張をしており、住民投票は英議会の認可がない限り違法であると述べています。これについてはまた後日解説しますが、両者の齟齬は簡単に埋められそうもありません。
この意見書を踏まえ、サモンド首相は今週英政府のスコットランド担当大臣と会談する予定です。サモンド首相とキャメロン首相との会談も来週に予定されています。
No comments:
Post a Comment